憧れ

心踊る眩しい季節が通り過ぎて、情緒に溢れた季節が訪れる。

風に吹かれた葉っぱたちが母なる大地を舞い、私が立つ、この場所を肥やしていく。

寂しそうにも力強く立ちすくむ木々たちは私だけが1人なのではないと

教えてくれるような気がして、どんな背中よりも、安心感を覚えてしまう。

 

でも、1人って何なのだろうか。

 

案外、人間誰しもが同じようなものだったりするのだろうか。

恋愛や友情や地位や趣味。

取ってつけたような色とりどりの葉っぱだけが世界で認められる個性だとして、

それら全て削ぎ落ちたとき、私には何が残るのだろうか。

それらが全てなくなったりしたときがきたとしたら人間は何に全力を注ぐのだろうか。

 

春の桜色や夏の緑、秋の暖のように眩いほどの色彩に包まれて輝く姿は

 

素敵だ。

綺麗だ。

圧倒的だ。

 

でも、私は寒さの中でたった1人で、でも力強く根を張ってそびえ立つ、その姿が

 

好きだ。

 

今は台風なんてきたら折れるし、日々の風に耐えることに必死な木だけれど、

でもいつか、嵐にも雪にも負けない、しっかりとした根を張ることのできる木になりたい。

 

そんなことを葉が舞い落ち、人肌恋しくなる季節は教えてくれる。

だから私には寒い刹那が似合う。