夢空間
長袖を脱ぎ捨て、思い切った半袖を身にまとう季節。
日差しが肌を突き刺して、特段理由もない独特の高揚感と共に滲んで見える影法師。
ふと窓を覗けば草木が青々と生い茂る。
湿った風に葉をなびかせまるで歓喜の舞を体現しているようだ。
付図にも遠いあの日の記憶が蘇る。
橙色に染まった水平線が空を孤独な模様へと誘い世界を包み込む、言葉にならない感触。
私は確かにあの光景に目を奪われた。
光と闇が、陰と陽が唯一、壮大に共存する世界線。
私はあの光景に恋をしていた。
思い出すほど愛おしく、恋しく、胸が張り裂けそうになるほど切なく儚い夢空間。
二度と戻ることできない空間を流れる時代の中で抱きしめるしかないのだろう。
そうしてまた一歩、踏み出すのだ。
自分だけの、未知世界へと。
その道を自らを持って閉ざす者は、渾身の魂の叫びすらも世界の片隅に届かない。